バイオマス発電所に必要な資格には何がある?

資格

今回はバイオマス発電所に必要な資格についての話をしようと思います。

工場には一般的な職場に比べ、落下・酸欠・巻き込み・爆発などの危険を伴う仕事が多く存在するので、そういった作業を正しい知識で行うことで自分や周囲を守れるようにするため多くの法律により色々な作業が制限されています。

バイオマス発電所も例に漏れず様々な法律による規制があり、その職務を行うために多くの資格が必要となっており、僕自身も必要な資格を多く取得してきました。

どこも大体必要な資格は同じではありますが、設備や発電所の規模などによっては要・不要となる資格が多少違ってくるので、それぞれ発電所で必須となるものや現場によっては必要になる物等を個別でまとめてみました。

バイオマス発電所で必須の資格

  • ボイラータービン主任技術者

電気事業法により発電用ボイラーの工事・維持・運用に関する保安監督を行うためボイラーの圧力に応じた種類の資格保有者の選任者が必要となり、ボイラーの使用圧力が5,880kPa以上であれば第1種、それ未満であれば第2種の免状が必要です。

取得は試験ではなく、学歴及び実務経験による申請で誰でも取得できますが、どんなに短くても2種で3~5年、1種に至っては6~10年ほど掛かるため、そういった点ではある意味取得難易度の高い資格と言えます。

選任は責任者クラスが行うことがほとんどなのでヒラの一般作業員でこの資格を保有して選任されているという人はあまりいませんが、正規の選任者が不在時に職務を代行する代務者の選任にはこの資格は保有していなくとも職務を代行できる能力があると認められていればよいので、代務者に選任されているけど資格は持っていないという方はいます。

ちなみに名称が長いので通称「BT」と略されて呼ばれることが多いです。

  • 電気主任技術者

この資格は通称「電験」とも呼ばれていて、BTがボイラーやタービンと言った機械の保安責任者ならこの電気主任技術者は発電機や受電設備といった電気の保安責任者となります。

電気事業法により、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督を行うため受電電圧に応じた種類の資格保有者を選任する必要があり、区分としては電圧が5万V未満なら第3種、5万V以上17万V未満なら第2種、17万V以上であれば第1種の資格保有者を選任しなければなりません。

ここでの注意点として、受電電圧が5万V未満であっても発電出力が5,000kW以上の発電所の場合は第2種の資格保有者が必要になり第3種の保有者では選任できません。
なお、電圧が7,000V以下かつ発電出力2,000kW未満の発電所であれば電気保安法人などと外部委託契約を結ぶことで自社に資格保有者がいなくても選任する必要が無くなります。

選任されるのは責任者クラスであることが大半ですがこの資格自体は誰でも受験することが可能であるため、電気関係の学校出身者やヒラの現場作業員でも免状だけは保有しているという方は多いです。

この資格もBTと同じく代務者が必ずしも資格を保有している必要はありません。

  • 公害防止管理者大気

大気汚染防止法により、ボイラー施設を保有する事業所ではボイラーから発生する排ガス量に応じた公害防止管理者大気区分の資格保有者の選任が必要となります。

区分としてはカドミウムなどの指定有害物質を含み排ガス量が4万m3/h以上発生する施設では第1種、指定有害物質を含み排ガス量が4万m3/h未満の施設では第2種、指定有害物質は含まず排ガス量が4万m3/h以上発生する施設では第3種、指定有害物を含まず排ガス量も4万m3/h未満の施設では第4種の資格保有者を選任します。

このうちバイオマス発電所では有害物質を含んだ排ガスは発生しない為、単純に排ガス発生量に応じて第3種または4種が必要になります(上位種の1種でも可)。

公害防止管理者には大気区分の他にも水質、ダイオキシン類、騒音振動といった区分がありますが、バイオマス発電所では基本的に大気以外の資格は必要ありません。

  • 危険物取扱者

消防法により指定数量以上の危険物を貯蔵し取り扱う事業所では取り扱う危険物の種類に応じた免状保有者から危険物保安監督者を選任する必要があります。

バイオマス発電所では起動停止の際に重油バーナを使用することが多いので、重油タンクを保有しています。よって重油のような引火性液体の取扱区分である「乙種4類」または全ての危険物を取り扱うことの出来る「甲種」どちらかの免状保有者が必要です。

また、保安監督者に選任されなくても危険物の取扱には対応する区分の免状を保有していなければないりませんので、作業員レベルでも大抵はこの資格を保有している場合が多いです。

必須でないものの、高確率で必要とされる資格

  • ボイラー技士

労働安全衛生法で定められたボイラーではボイラー技士の中から取扱作業主任者を選任する必要がありますが、バイオマス発電所は蒸気タービンで発電をしているためこの場合はボイラータービン主任技術者を選任すればボイラーの取扱作業主任者を選任する必要が無くなるので、ボイラー技士の資格保有者は不要です。

しかし大きなボイラーを取り扱う以上、最低限の知識を付けるという意味でもこの資格の取得を必須としているバイオマス発電所はかなり多い・・・というかほぼ100%であると言えます。

種類は2級、1級、特級とあり、資格を取得するのにBTと同じく実務経験が要ります。
1級までは運転員レベルでも保有している人が多いですが特級ともなると難易度が跳ね上がるため、よほどの暇人か意識の高い人でもない限り取得する人はいません。(僕も過去に特級を持っている人とは片手で数えるほどしか会ったことがありません)

  • エネルギー管理士

省エネ法により、事業所のエネルギー使用量が原油換算で3,000kL以上の事業所は第1種エネルギー管理指定工場に指定されるので、エネルギー使用量に応じて1~4人の免状保有者からエネルギー管理者を選任しなければなりません。(3,000kL未満1,500kL以上の場合は第2種に指定され、この場合はエネルギー管理員の選任)

エネルギー管理士の資格には熱分野と電気分野があり、昔はそれぞれの区分から選任する必要がありましたが現在はそれが統合され、熱分野又は電気分野どちらかの免状を持っていれば良いことになっています。

エネルギー使用量が原油換算で3,000kLに満たない事業所には選任義務は無いので必ずしも必要ではないですが、一日数百tレベルで燃料を使用する発電所であれば大概は第1種に指定されると思うのでよほど小型のバイオマス発電所でない限りは必須と言えます。

資格の中では唯一タービンについての知識が得られたり発電所に付属する冷却塔や熱交換器、熱力学や流体力学の知識が付くので、発電所で働いていくのであれば勉強しておくと非常にためになる資格です。

会社によっては必要とされる資格

  • 衛生管理者

労働安全衛生法により、一定人数以上の従業員を有する事業所にはその従業員数に応じた数の衛生管理者の資格保有者を選任しなければなりません。

この資格には1種、2種ありますが、バイオマス発電所のように電気供給業を行う事業所には1種が必要となります。

選任の最低人数は従業員数が50人~100人の事業所に一人で、50人に満たない事業所の場合はこの資格保有者による選任は不要となります。

バイオマス発電所単体の事業所はかなり大規模な所でも多くて30~40人程度なので、恐らくよっぽどこの資格が必要な事業所は無いと思います。

  • 電気工事士

電気設備の工事や取扱いをするには電気工事士の資格が必要です。この資格には第2種と第1種があり、第2種では受電電圧600V以下の一般用電気工作物、第1種ではそれ以上の電圧になる大規模施設や高圧送配電線路の工事が出来ます。

バイオマス発電所内で作業する分にはこの資格は必要無いですが、保全業務等で電気関係を担当する場合には知識や技量の証明として取得を推進している会社はあります。

また電気関係の資格では比較的難易度が高くないので、電気の知識だけは最低限つけておきたいと言う方が自己啓発で取ることもあり、仕事では使わなくても資格だけは持っているという人は多いです。

現場で必要となる可能性のある資格

  • 車両系建設機械運転技能講習

ホイールローダーやショベル等の建設用重機を運転するのに必要な資格。

バイオマス発電所によっては燃料をホイールローダーを使って自力でコンベアのホッパーに投入する作業があるので、そういった所ではこの資格が必要となります。

  • フォークリフト運転技能講習

バイオマス発電所では炉内から燃えがらや異物が排出されます。排出された異物類は回収コンテナなどに貯留されるのですが、そのコンテナを空にする作業にフォークリフトを使用するためこの資格が必要になります。

他にも薬品やフレコン、予備品などを運搬するのにも使用するので講習系の資格の中では最も使用頻度が高いです。

  • 特定化学物質及びアルキル鉛等作業主任者

該当する特定化学物質を貯留する設備の取り扱いにこの有資格者を選任する必要があります。

バイオマス発電所で使用される特定化学物質では、純水排水装置に使用される薬品などが該当していることが多いと思います。

  • 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者

燃料タンクや排水槽の中など、酸欠にかかる恐れのある場所で作業する時にはこの資格保有者から作業主任者を選任する必要があります。

作業主任者は作業前に酸素濃度などを測定して異常の有無を確認しなければならない為、職場に最低一人は資格保有者が必要です。

  • 床上操作式クレーン運転技能講習

バイオマス発電所のタービン室や倉庫には大抵ホイストクレーンなどが設置されているので、このクレーンを操作するにはこの資格保有者が必要です。

クレーンの吊り上げ荷重が5t以上なら技能講習、5t未満なら特別教育を受ける必要があります。

  • 玉掛技能講習

クレーンを使って物を吊り上げる際にはワイヤー等を使用するのですが、この時物を掛けたり外したりするのにも資格が必要です。

よって前述したクレーン運転技能講習と併せて取得することが多いです。

最後に

もし何の資格も持っていない完全未経験の人がバイオマス発電所で働くことになった場合、まずは国家資格なら危険物取扱者乙種4類と2級ボイラー技士、講習ならフォークリフトや車両系建設機械運転の取得を義務付けられる所が多いと思います。

それ以外の資格に関しては出世して責任者クラスになったりしない限り選任されることも無いので必要ないですが、自己啓発であったり、転職に備える為などの理由から取得を目指す人もいます。

特に交代勤務の運転員になれば夜勤中なんかは時間が余ったりするので、職場によっては仕事中に勉強することも出来ます。
僕も運転員時代、やること無い時は勉強してても良い環境にいたので、その時間を利用して特級ボイラー技士や公害防止管理者大気3種、エネルギー管理士などを取得しました。

もし勉強は苦手・嫌いという方は、ここには書いていませんがアーク溶接やガス溶接など講習で取れる現場系資格をたくさん取得すると言う手もあります。

たくさん資格を持っていると人によっては「資格マニア」と言われ馬鹿にされることもありますが、何も持っていない人に比べればマニアと呼ばれるくらい資格を持っている方が知識の証明にもなりますし万が一転職したいという時に目に見えて分かる武器になるので、この記事で上げた資格のうち2・3個くらいは頑張って取得しておいても損は無いと思います!

僕も資格を取っていたおかげで他のバイオマス発電所に転職する時も一定の評価をして貰えたし、現職でも幸か不幸かスタッフへの抜擢をされました。

資格は実務云々・・・と言いますが、どちらかと言えば転職や昇進の武器として使うのが正解かもしれませんね。

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