色々あるよ!バイオマス発電所の分類

バイオマス発電について

一言にバイオマス発電所と言っても日本全国には発電出力が数万kWの大型から数千kWの小型まで、また使う燃料の種類や燃料を燃焼させるボイラーの種類に至り色んなタイプのバイオマス発電所が建設されています。

そんなバイオマス発電所を「ボイラー別」「燃料別」「規模別」に僕が勝手に分類してみました。

ボイラー別

現在運転しているバイオマス発電所には、大まかに分けて「循環流動層式」「バブリング式」「ストーカー式」の3種類の燃焼形式であるボイラーが存在します。(バイオガスを使用したボイラーは今回は除外しました)
その中でも特に使用頻度の高いのは「循環流動層」「バブリング式」と呼ばれる方式のボイラーです。

これらのボイラーは炉内に砂が入っていてその砂を空気で流動させています。砂は燃焼により高温となっており、流動している高温の砂に木屑が供給されると砂と燃料の摩擦により表面から削られるように燃焼していきます。

  • 循環流動層式

炉内の砂を空気で炉の最上部まで巻き上げて、その砂をサイクロンと呼ばれる掃除機と同じ機構で再度捕集する方式のボイラーで、短時間で燃料を完全燃焼させることが出来るのでバイオマス発電所の中では最も燃焼効率が良いボイラーです。

高効率を求められる10~100MW級の大規模な発電所に良く採用されますが、使用される燃料はある程度指定されたサイズのものに限られるという欠点もあります。

  • バブリング式

炉内に砂があるのは循環流動層式と同じですが、このバブリング式は炉の上まで砂を巻き上げずに炉底でずっとバブリングしています。

燃焼速度が循環流動層式より遅い為燃焼効率は落ちますが、使用できる燃料のサイズが循環流動層式よりも大きく、その分種類も豊富に扱えるようになります。

循環流動層式のように設備が複雑化しておらず建設費が安い上にストーカー式より燃焼効率が良い為、2MW~10MWまでの小型・中型クラスのバイオマス発電所によくみられる形式になります。

  • ストーカー式

焚火のように炉内で木屑の山を表面からじわじわと燃やす方式のボイラーです。

完全燃焼させるのに最も長い時間を要するので燃焼効率は砂を使用したほかの方式より劣りますが、ゴミ焼却場のように使用できる燃料サイズや品質にあまり影響されず異物混入に強いというメリットがある為、小型~大型のプラント問わず燃料に木屑以外の物も使用したり品質の悪い木屑の利用が多いバイオマス発電所に採用されることがあります。

チャーメン
チャーメン

狙ったわけでなく完全にたまたまですが僕は3社のバイオマス発電所の中でこの3つとも経験してます。えっへん!

燃料別

  • 未利用材

森林において間引きされた間伐材をチップ化したものは未利用材に分類され、最も売電単価の高いものに区分されています。これは元々バイオマス発電所の目的が日本の山で多数放置されてきた市場価値のない間伐材を利用するということに起因しています。

売電単価は高いですがその分元々搬入コストの高い資源であることやバイオマス発電所として運営できるだけの資材を確保できるエリアに限りがあるデメリットもあるので、小型バイオマス発電所なら未利用材100%でも運営出来ますが中~大規模発電所では未利用材のみの発電では燃料が足りなくなるので、他の国産材や輸入材で賄う方式がとられることがほとんどです。

  • 一般木材

未利用材として区分されない木材はほぼこの一般木材に分類されます。
例えば森林の間伐材とは違って山を切り開くときに出た大量の木や、都市部等で木の管理の為に伐採された際に発生する剪定材、木を製紙用パルプに使用するチップへ加工する際に不要となる抜根・枝葉部分、そして海外からの輸入材などが対象になります。

海外の輸入チップは切削チップが大半なので品質も問題ないですが、剪定材や抜根・枝葉などの加工チップには石や土といった異物を含む上に水分も多くカロリーが低いなど燃料としては品質の悪い物が多いです。
しかしこれらは未利用材と違って定期的に発生するのでバイオマス発電所にとっては重要な燃料源となる為、多くのバイオマス発電所ではこれらをチップ化して未利用材と混合して使用しています。

  • 建築廃材

家屋を除去した際に発生した木質由来の廃棄物をチップ化したものが分類されます。
森林の間伐材や剪定材などと違ってすでに加工されていたボードや柱などが材料となっているため水分が非常に少なくカロリーが高いチップが多いのがメリットですが、この他にも釘やボルトナットのような家の建築に使用されていた鉄屑も多く含むためボイラー内部を痛めやすいというデメリットもあります。

売電単価も2023年現在で13円/kWと他の木質チップと比べ安価となっているので、このチップを主燃料として使用するバイオマス発電所は、燃料の単価を安くできる産廃業者が主に事業者として行っていることが多いです。

  • PKS

Palm Kernel Shell(パーム・カーネル・シェル)の略称で、パーム椰子の種から油を搾油した後のヤシ殻のことです。

生産の大半はインドネシアとマレーシアの2か国に依存しており、日本で使用されるPKSもほぼ全てこの両国からの輸入品となっています。

FIT区分で言うと高めの売電価格である一般木材(24円/kW)に該当し、品質も水分が少なく高カロリーとバイオマス燃料としては非常に優秀であるため主燃料にしているバイオマス発電所も多いですが、その分現在は燃料の奪い合いと価格高騰、生産国の森林破壊など、一番問題となっている燃料でもあります。

  • 木質ペレット

乾燥した木材を粉末状にして圧縮し固形化した燃料になります。

国内産より輸入材の方が大量に安価で手に入り、水分が少ない高カロリー燃料なので、PKSと同じくこちらも大型バイオマス発電所ではよく使用されています。

容量別

大規模:発電出力10MW以上

発電出力10MW以上のバイオマス発電所は大規模に分類としました。

10MW級のバイオマス発電所はまだ国内材だけで燃料が賄えますが、50~100MW級のような国内でも最大級の規模にもなるととても国内材だけでは足りない為、ほとんどは輸入材としてチップ・PKS・木質ペレットそして石炭の混焼をしています。

輸入チップは24円/kWで売電できるうえに輸入で大量安価で手に入り、更に大出力で多くの電力を送電できるため材料さえ長期間確保できる算段があれば最も収入効率の良いバイオマス発電となります。

ただし現在この規模(10MW以上)はFITの売電区分で輸入材や発電出力に制限が掛けられていたり、輸入材の取り合いで燃料不足や価格高騰が起きたりと逆風が強く、今後は建設されなくなってくると思われます。

中規模:発電出力2~10MW

発電出力2MW~10MW規模のバイオマス発電所は中規模に分類しました。

この規模であれば輸入材に頼らず日本国内だけの燃料でギリギリ運営できるラインになります。

輸送や発電所運転技術に精通した大企業でない一般企業でも気軽に手が出しやすい規模なので、恐らく最も国内で多いタイプの発電所だと思われます。

逆に言えば全てが中途半端と言える規模でもあり、発電効率もそこまで高くない上に燃料をまぁまぁ使用するので燃料集荷も面倒で、競争力のない場所の発電所は収益が取れず現在進行形で稼働停止してしまっているので要注意。

ちなみに受電電圧7000V未満かつ発電出力5MW未満であれば電気主任技術者を自社で選任しなくても外部委託できるようになります。

小規模:発電出力2MW未満

2MW未満のバイオマス発電所は小規模型のバイオマス発電としています。

発電出力が少ない=売電収入も少なくなる為、人員は最低限で占められている所や外部委託している所が多いです。

2MW未満の発電所は現在国が最も推奨している規模のバイオマス発電のため特典(?)のようなものがあり、未利用材を使用した燃料の売電価格が通常32円/kWから40円/kWに上がります。
なので発電出力が少なくても十分な収益が見込めるようになります。

燃料搬送から発電所運営までを全て地産地消で行う地域密着型のバイオマス発電所が多く、このタイプが本来あるべきバイオマス発電の姿だと思います。

最後に

全てを網羅しているわけではありませんが、大部分のバイオマス発電所は「バブリング式で未利用材と一般木材を使用する出力5MWの発電所」「循環流動層式で一般木材とPKSを使用する出力50MWの発電所」などといったようにこの分類中のどれか一つづつに該当すると思います。

これに該当しない型と言えば鶏糞やバイオマス由来の廃棄物を発酵させ発生したメタンガスによるバイオガス発電や、バイオマス燃料で発生させた蒸気を発電以外の熱源(温水や製品の加熱)に利用する熱電併給型などといった発電所もあります。

今バイオマス発電業界では燃料は取り合い、価格は高騰、その他運営費用は増大と業界全体に強い逆風が吹いており、個人的にこのまま行けばこの先生き残るのは集荷力に長けた高効率の大規模発電所、または地産地消で細々だけど堅実に出来る小規模発電所のどちらかくらいだと思います。

業界に長年いる身としては全てのバイオマス発電所が仲良く共存出来る道を見つけて欲しいものです。

チャーメン
チャーメン

バイオマス発電所単体の内部ですら人間関係や設備トラブルが絶えない所ばかりですけどね・・・

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