当記事では公開日時点でのFIT認定されている1,000kW以上の各バイオマス発電所の情報や、公開されたことのある求人などをまとめています。(※木質チップ系燃料を使用した発電所に限定している為、木質系燃料由来のガス化エンジンやディーゼル発電所は掲載していますが、廃棄物由来のメタンガスを利用したバイオガス発電やパーム油発電所、ごみ焼却所等は除外しています。)
一応、建設予定のバイオマス発電所についても建設予定が確定していたり、情報が明確に開示されているものはなるべく載せていきます。
今回は中国地方5県(鳥取県、岡山県、島根県、広島県、山口県)のうち、山口県のバイオマス発電所についてご紹介します。
現在FIT認定されて運転している山口県のバイオマス発電所は、僕の調べた所約11件ほどになっています。
燃料の略称はWC:木質チップ(未利用材、一般木材、建築廃材含む)、WP:木質ペレット、PKS:ヤシ殻となっています。
山口県
【1997年8月運開】宇部興産伊佐セメント工場火力発電所
美祢(みね)市にある宇部興産伊佐セメント工場で1997年に稼働した自家発電用火力発電所。
運開当初は石炭専焼だったが、2004年に廃木材チップ燃料化設備を新設し山口県内及び県外で発生する間伐材や建設廃木材等を破砕設備でチップ化した後に本発電所で使用するようになった。
ボイラーは三菱重工製の循環流動床式を採用しており発電出力は57,150kW。
この工場では2022年に燃料の石炭が高騰し採算が合わなくなってきたことから、生産体制を縮小したようです。コロナやウクライナ侵攻の影響はバイオマス発電所だけでなく石炭火力でも非常に大きいですね・・・
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【2004年3月運開】宇部興産発電所6号ボイラー
宇部市に拠点を構える宇部興産が保有する発電所の4~6号基のうち、6号発電所は2004年3月に運転を開始しIPPにより中国電力に売電していた。
2006年7月にバイオマス供給設備を増設して以降は、石炭と家屋解体材等由来のリサイクルチップによる混焼発電をしており、FIT制度開始後はFIT売電を行っている。
ボイラーはIHI製の微粉炭式を採用しており発電出力は216,000kW。
この6号機は2013年の定検終了後の起動時に、水管チューブが破損し水に冷却用の海水が混じったことにより1年半稼働停止に至っております。(復水器のチューブ?)
ボイラーに海水が混入してしまうとかなり復旧が困難なのですねぇ。
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【2005年7月運開】ミツウロコ岩国発電所
ミツウロコグループのミツウロコグリーンエネルギーがRPS 法制度下で2006 年に開業した。
開業当時は建設資材廃棄物をリサイクルした燃料で稼働していたが、2012 年に FIT 制度の導入間もない同年 10 月に移行認定案件の第 1号となり、現在では燃料の7割を未利用材、一般木材にシフトしている。
ボイラーはJFEエンジニアリング製の循環流動床式を採用しており発電出力は10,500kW。
資格取得のための支援制度があり、資格試験の受験料、働きながら夜間・通信大学で学ぶための支援制度もあり、実際に同発電所所員の中にも夜間の大学を卒業し第2種電気主任技術者の資格を取得した事例がある。
現在、所長兼 BT 主任技術者は、同発電所開業当時に入社した一期生が務めている。当時は、最若手の社員としてキャリアをスタートしたが、他社を定年退職後に同社で勤務した歴代の主任技術者の指導を受け、着実に経験を積み、BT主任技術者の資格を取得、所長に就任している。また、所長の指導の下、新たにBT 主任技術者を育成したとのこと。
保守運営はミツウロコグリーンエネルギー社員が行っていると思われるが、現在は中途採用などは行っていない模様。
【2007年12月運開】徳山製造所中央発電所7号機
周南市にある徳山製造所中央発電所の自家発電所の一つ。4~7号機までがあり現在は4号以外の3基が運転中。
7号機はもともと1971年に建設された重油焚きボイラーだったが、老朽化に伴い2007年に石炭・バイオマス混焼発電所として新設された。
燃料には石炭と木質チップの他、廃タイヤなども使用する。
ボイラーはIHI製の循環流動床式を採用しており発電出力は78,000kW。
発電所の保守運営は自社従業員にて行っていると思われる為、トクヤマプラントオペレーターの求人情報を記載。
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【2008年2月運開】日本製紙岩国工場9号機
日本製紙岩国工場に送電・送気するための自家発電所の一つ。もともとは重油ボイラーだったものを老朽化に伴い2008年度にバイオマスボイラーとして新設した。
燃料には建築廃材系の木質チップやRPFなどを主として石炭・廃タイヤ・廃プラなども混焼しながら使用している。
ボイラーはIHI製の循環流動床式を採用しており発電出力は35,000kW。
2022年9月18日に同工場内のバイオマス貯蔵所から出火する事故が発生している。
岩国工場では敷地内に10万kW級バイオマス発電所の建設も予定していましたが、事業の採算性が合わなくなったことを理由に2022年度で計画が中止となっています。
発電所の運営は日本製紙従業員により行われていると思われる為、日本製紙操業オペレーターの求人を記載。
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【2019年7月運開】エネルギアパワー山口
エア・ウォーターと中国電力の共同出資で設立されたバイオマス発電所でエアウォーター防府工場内に建設された。2023年1月に中国電力100%子会社となり、社名もエアウォーター&エネルギアパワー山口からエネルギア・パワー山口株式会社へ変更となった。
燃料には国内未利用材の他PKSや石炭も使用する。
ボイラーは住友重機械工業製の循環流動床式を採用しており発電出力は112,000kW。
発電所の保守運転は発電サポート事業を手掛ける中電環境テクノス(株)が行う。
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【2022年4月運開】下関バイオマスエナジー
九電みらいエナジーを主要として西日本プラント工業、九電産業が共同で設立したバイオマス発電所。
燃料には輸入ペレット及びPKSを使用する。
ボイラーは住友重機械工業製の循環流動床式を採用しており発電出力は74,950kW。
本プラントは九電みらいエナジーが発電所の運営全般、西日本プラント工業が設備の建設・保守などのEPC、九電産業が運転を担当する等、九電グループが全ての業務を一貫して手掛ける。
2022年9月2日に同工場内の灰貯蔵タンク内で作業員が灰に埋まり死亡する事故が発生している。
2023年1月21日にはプラント停止後にペレットバンカ内で火災が発生している。
【2022年9月運開】周南パワー
東京センチュリーが主体として、トクヤマ、丸紅クリーンパワーらの共同出資で誕生したバイオマス発電所。徳山製造所敷地内に建設された。
当初は石炭専焼の予定だったが環境に配慮してバイオマス混焼に切り替えた。
運転初期のバイオマス混焼比率は20~30%程度だが、将来的には50%まで増加させる計画。
ボイラーは三菱製のを採用しており発電出力は300,000kW。
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【2023年1月運開】出光徳山バイオマス発電所
石油元売り大手である出光興産の徳山事業所内におけるバイオマス発電事業。
使用燃料は輸入ペレット及びPKSで、燃料ペレットを専用貯蔵することで巨大サイロや倉庫を必要としない点が他の大型バイオマス発電所と異なる。
三井住友ファイナンス&リースとの設備のリース契約を行っている。
ボイラーは製の循環流動床式を採用しており発電出力は50,000kW。
【2024年月7運開予定】山陽小野田グリーンエナジー
大手総合建設企業である西松建設が手掛けるバイオマス発電事業。
燃料は山口県内の未利用材や一般木材を使用し、山陽小野田バイオマス燃料供給株式会社(SBK)が担う。
ボイラーはタクマ製を採用しており炉型は不明だがストーカ炉または流動床式と思われる。発電出力は1,990kW。
発電所の運営は地元などから新たに雇用する予定とのこと。
本件とは無関係ですが、山陽小野田では他にも竹を燃料に発電する世界初の竹専焼バイオマス発電所である山陽小野田バンブーバイオマス発電所も誕生しております!
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【2025年1月運開予定】長府バイオパワー
JAPEX(石油資源開発)、東京エネシス、MOT総合研究所、長府製作所、川崎近海汽船ら5社で設立されたバイオマス発電事業。
燃料は輸入ペレット専焼。
ボイラーは三菱製の循環流動床式を採用しており発電出力は74,950kW。
運開後の保守運営は発電所設備のメンテナンスや工事などを手掛けるテクノ東京が業務委託されている模様。
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山口県は日本有数の石油化学コンビナートを有する工業県。
貿易業も発展しているのを生かした大規模バイオマス発電所が多く建設されており、その総合発電量はなんと日本全国1位!!
愛知や福岡のように工業が昔から盛んな県には大規模バイオマス発電所が集中していますね。
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