バイオマス発電所のお仕事【運転員の仕事内容①】

バイオマス発電について

今回は、前回書いた記事

この記事の中で紹介したバイオマス発電所の仕事の中でも、僕が長年行っていた運転員の仕事についてもう少し突っ込んでお話ししようと思います。

バイオマス発電所の運転員に共通の業務

  1. DCS監視業務
    • 運転員の最もメインとなる業務で、DCSと呼ばれるパソコンモニターに映し出されるバイオマス発電設備各所の運転状況を中央制御室で監視する業務です。

      運転状況には発電電力量、給水系のタンクレベル、主蒸気圧力、主蒸気温度、給水量、空気流量、炉内温度、コンベア電流値と言ったプラントの色んな数値があり、その数値に異常が無いかどうかをモニターで24時間チェックしています。

      現在はほとんどの制御が自動で行われており、通常時に運転員が手動で運転に介入するようなことは滅多にありません。
      よく運転員の仕事は「座ってるだけで良いから楽」と比喩されることがありますが、これが理由です。正直、何もなければ実際本当に座ってるだけなのでダラダラするだけの時もあります。

      でも運転中に何か不具合等があった時は手動で運転に介入しなければいけないし、その時はプラントのことをしっかり理解している必要があります。
      日頃からしっかりとプラントのことを勉強していればこうした有事の際にも対応できますが、何もないからとずっとダラダラしているだけの人はいざと言う時に何も出来ず、結果「あいつはいざと言う時役に立たない」と言う最悪のレッテルを張られることになります!

      それを良しと出来る面の皮の厚い奴らは少数ながらいるものの、普通の皆さんはそんなの嫌ですよね?

      なのでただ座っているだけに見えたとしても、案外奥は深い仕事です。
  2. 現場巡視点検
    • DCS監視業務と並んで運転員のメインとなる業務です。
      DCSのモニター上では数値の動きしか分かりませんが、例えば現場の機器から漏れがあったり異音異臭がしていたとしても中央制御室では分かりようがありません。

      よって、定期的に現場を実際に巡回してボイラー本体や付属機器に異常が無いかを点検する必要があります。

      点検する項目としてはボイラー内にある設備の「ポンプの各電流値や吸込・吐出圧力の異常の有無」「タンクの漏洩の有無とレベル残量の確認」「コンベアのチェーンの張り具合」等がありますが、そのほとんどは目視による判断になります。

      この他に「電動機や軸受の異音・振動・発熱の有無」という点検もありますが、この時はまず手で触診して変な振動や発熱がないか、そして聴診棒という器具で異音がしていないかを診ます。
      バイオマス発電所の設備点検で使う5感の割合は、僕の体感では視覚が5割・聴覚が3割・嗅覚と触覚が1割づつって感じですが、適当な人だと視覚10割で終わってるような人もいます。

      でも巡視点検というのはトラブルを発見するだけでなく、トラブルになりかけている箇所を特定して未然に防いだり報告することも非常に重要で、その為には5感をフルに生かした点検を普段から心がけていることが大切だと思います。

      こういった点検の際に異常が発見された場合は運転員で処置できるものはその場で運転員が補修し、大きな工事が必要なものなら保全へ報告して工事手配をしてもらいます。
  3. トラブル対応
    • プラント内で機器の故障など異常があった時は、その重要度に合わせて「重警報」「中警報」「軽警報」の順に各アラーム音が鳴るので、中央制御室と現場の二手に分かれて運転員が一次対応にあたります。

      一次対応では、例えばコンベアが止まったのであればまず内部を見て異物の噛み込みやチェーンの破損が無いかなどを確認、もし何も見つからない場合は現場のスイッチでインチングという1秒ごとに発停操作を繰り返し、コンベアの動きに異常が無ければ通常通り運転させて様子を見る・・・といった感じの対応を行います。

      もしチェーンの破損や異物の噛み込みがあり運転員ではどうしようもない場合はスタッフや保全員を呼び出して対応してもらうことになります。

      また、この時中央制御室ではプラントが止まらないように監視することが最重要業務になります。燃料の供給系統が止まったりした時は復旧するまでに炉内温度や主蒸気圧力、ドラムレベルが鬼のように上下に振れるので、この時ばかりは自動制御では間に合わない為運転員が手動で介入してプラントの静定を行わなければなりません。

      前述しましたがこの時の対応でうまく運転を継続できれば「あいつは運転員として技量が高いし任せておける」と信用されるし、逆に何も出来ずにただ見ているだけでプラントを止めてしまった日には陰でも表でもボロクソに言われる羽目になります。

      なのでトラブルの何もない日にもこうしたトラブル対応のシミュレーションをしていざと言う時に備えておくことが大切です。
  4. 定期点検対応
    • バイオマス発電所は年に1~3回くらいの頻度で計画的に停止させてボイラー・タービン・発電機の内部を点検したり整備をします。
      よって、運転員は停止日に合わせてプラントの停止操作を行い、停止後はプラント点検の為の準備や停止している時にしかできない自主作業をしたり、プラント起動に向けた準備(水張とか)を行います。
      プラントの起動は重油を使って昇温し、蒸気の圧力や温度を見ながらDCSを手動操作したり現場でバルブを開閉操作したりと、運転員の定期業務の中では最も忙しい日になります。

      このプラント起動を理解しながら出来るかどうかというのが、運転員として最も求められる技術になると思っています。

以上4つの項目に関してはどこのバイオマス発電所でも運転員として必須と言える業務になります。

僕が経験してきた全てのバイオマス発電所でもこれらの仕事は必ず行ってきましたし、運転員として評価される為にはこの4つの業務がどのレベルで遂行できるか?という所が指標になります。

もちろん「この4つの仕事さえやっておけば良い」ということではなく、あくまでも今紹介した業務は「運転員として最低限出来なければならないもの」になるので、バイオマス発電所運転員として技量や評価を上げるためにはこれらの業務をもう少し高いレベルで行わなければなりません!

そしてどの仕事にも言えますが、特にこの運転員の仕事は平常時ならサボろうとすればいくらでもサボれてしまう仕事でもあるので、普段からしっかりやっている人とそうでない人のレベルはどんどん広がります。

監視業務ならただ座っているのではなく普段から数値の変化を見ておくことで如何に早く異常を察知して報告や対応が出来るか。

巡視点検ならただ見て終わりでなく、見るなら細部までそして5感をフルに使って異常の有無を判断できるか。

トラブル対応ならスタッフや業者に頼らず、どこまで自分たちで復旧作業できるか(トラブルにもよるけど)

起動停止なら手順書見ながらだけでなくボイラーの特性を理解して立ち上げられるか。

そういった心構えで仕事をしている人は出来る運転員としてどんどん信頼されるし、サボりまくってる人は何十年運転員やってても全く使えない奴扱いされてしまいます。

僕が管理する側になってみても、普段から細かい所までチェックして気になったことを逐一報告してくれる人が監視や点検をしている時は「この人がやってて異常無いなら大丈夫」と思うし、逆に監視は座ってるだけ、点検は適当に見てすぐ帰ってくる、トラブル対応も出来ないような人が当直やってる時はめっちゃ不安になります。

偉そうなこと言ってる僕も所詮は高卒でそこまで頭は良くないしやる気だけは人一倍!・・・でも無かったですが、仕事の出来る先輩から「運転員として評価されたいなら最低でもこの業務はちゃんとやっとけ!」といつも言われてましたし、実際今もその通りだと思っています。

もしバイオマス発電所運転員の仕事に興味ある、若しくはこれからこの仕事に就くという方は、まず最優先にこれら4つの業務が出来るようになることを心掛けて下さいね!

この他にも機械の保全が高いレベルで出来たり電気に強いというタイプの運転員は数が少ないので、それだけで重宝される傾向があります。

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