バイオマス発電所が流行したきっかけ

バイオマス発電について

ここ最近になって急にそこら中に建設されだしたバイオマス発電所ですが、そもそもどうして今頃になって流行り出したのでしょうか?

それは2012年より始まった「FIT制度」というものが大きく関係しています。

FITとは「Feed in Tariff」の略称で、石炭火力のような環境に負荷のかかる既存の発電方法から、環境負荷の低い再生可能エネルギーを利用した発電を推進する為に国が定めた制度です。これにより太陽光やバイオマス燃料と言った再生可能エネルギーで発電した電気は決められた一定価格で電力会社が買い取ってくれる為、経営リスクが抑えられた売電事業が出来るようになりました。

どうして今まで普及しなかったのか?

FIT制度が始まるまでのバイオマス発電と言えば、産業廃棄物処理を行っている会社の焼却炉変わりだとか、僕が以前勤めていたような製紙工場のように熱源を主として利用する自家発電所くらいしかありませんでした。

理由として、まず木屑を使用して発電するバイオマス発電というのは、発電効率が他の火力発電より非常に低いです。
木屑は石炭・石油と言った燃料に比べ熱量がとても低いので燃焼温度が上がりづらく、その結果発電効率は約20%~高くても30%しかありません(他の火力発電は40%以上の効率がある)

そしてバイオマス発電に使用される木屑燃料は山に放置された間伐材を利用するのですが、この間伐材を施設まで搬入する為の費用やチップへの加工費用、発電所までの運搬費用等が加わり、発電効率に対して原料コストが高くなる傾向があります。

現在はFIT制度のおかげで利益が出せるようになっていますが、それでも総売上の約6~7割がこの燃料費が占めていることからも、燃料費用がバイオマス発電にとって如何にネックとなるかが分かると思います。

FIT制度が始まってから急速に普及し始める

FIT制度が制定されたことにより、使用する木屑の種類によって1KWh辺りの売電価格が以下のように定められました。()は発電出力で単価は2023年度のもの

  • バイオガス(全規模) 39円+税
  • 未利用材(2,000kW未満) 40円+税
  • 未利用材(2,000kW以上) 32円+税
  • 一般木材(10,000kW未満) 24円+税
  • 一般廃棄物(全規模) 17円+税
  • 建築廃棄物(全規模) 13円+税

この高額な価格設定と国からの補助金制度等により、日本全国で大小様々なバイオマス発電が建設されることになりました。

数としては、2015年頃にはほんの数十件程度だったものが、2023年時点で200件に迫る勢いで乱立しており、特に間伐材・林地残材などを積極的に利用している北海道、山形や福島等の東北地方、長野や岐阜の中部地方、宮崎や鹿児島の九州地方では顕著に増加しています。

山地面積の少ない地方では燃料が集荷しにくいので、そういった地方ではバイオマス発電所は大規模化することで効率を上げ、海に面した立地に建設することで海外からの輸入材により売電するタイプのバイオマス発電所が目立ちます。

また、敢えて売電単価の低い建築廃材や一般廃棄物を利用することで燃料が競合することのないバイオマス発電所を建設する事業者もいます。こういった事業者は燃料の搬送コストを削減できるチップ加工業者が行う傾向が強いです。

今後の動向は?

国が想定する以上の速度で乱立するバイオマス発電所や太陽光発電といった再生可能エネルギーにより、電力料金に上乗せされる再生可能エネルギー発電促進賦課金が値上げされました。

これを受けて太陽光発電の売電価格が年々下がり続けたり、バイオマス発電の輸入材などの一般木材の買取に出力制限が設けられたりと、再生可能エネルギーを促進するつもりがむしろどんどん制限されるハメになりました。

そして輸入燃料であるPKSや木質ペレットは、大規模バイオマス発電所の需要が多く取り合いになっているのでその価格は右肩上がりに高騰、更に燃料確保自体も困難な状況となっています。

追い打ちをかけるようにコロナや原油価格上昇の影響による輸送費の高騰、ロシアによるウクライナ侵攻やウッドショックの影響で円安ドル高による輸入燃料自体の価格が高騰したことで、燃料費が売電コストを圧迫し経営難に陥るバイオマス発電所や、電力自由化により小売り業を行ってきた新電力の相次ぐ倒産・撤退など、再生可能エネルギーを取り巻く環境ははっきり言ってかなり厳しい立ち位置にいると言えます。

上記の影響から、今後は輸入燃料に頼った大規模発電所や未利用材のみを使用する内陸型の発電所は間違いなく減少すると思われます。

やはりバイオマス発電の本来の役割である地産地消型の小型発電所、もしくは別工場へ熱電併給を行っている自家発電所のようなバイオマス発電所が今後は生き残っていくのではないでしょうか。

僕が今働いているバイオマス発電所でも燃料不足や価格高騰の影響をモロに受けています。

お願いだから閉鎖なんてことにはならないでほしいですが・・・

コメント

タイトルとURLをコピーしました